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地理をエンタメに!地域の事象や旅について語る

日本 高級住宅地立地論1

みなさんこんにちは。

 

今回は、日本に点在する高級住宅地についてゆるく語っていきます。

 

みなさんは「高級住宅地」と聞くとどこを思い浮かべるでしょうか。関東では田園調布、関西では芦屋が全国的に有名ですが、その他にも数多存在します。高級住宅街の立地は一枚岩ではなく、都心の一等地にあるもの、郊外に計画的に造成されたもの、海外のラグジュアリーレジデンスのように住宅地全体が下界と遮断されているものと実に様々です。地域別に分けてみていきますので、興味のある方は是非読んでみてください。

 

札幌・・・円山 宮の森 

これらの地名を聞いてピンとくる人は多くないと思います。どこにあるのか、脳内地図がエラーを起こしそうです。札幌市街地のやや東より、観光地でいうと、北海道大神宮や円山動物園があるエリアです。JR札幌駅からは車で20分ほどの距離にあります。

 

 

地下鉄駅(円山公園駅)から山を登る必要があるためややアクセスに難があり、円山はともかく宮の森は車での移動が前提となります。このような地理的なハードルは浮浪者の侵入を物理的に防いでおり、高級住宅地の特徴の一つです。米ロサンゼルスのビバリーヒルズの立地を考えると明らかだと思います。

宮の森 本郷新記念館札幌彫刻美術館に続く道。石畳が美しい。

1972年の札幌冬季オリンピックで使用された、大倉山スキージャンプ台があるのもここで、中心地に近い地区ながら豊かな自然に囲まれてます。屯田兵期、新潟県からの入植者により開発され、1929年には秩父宮雍仁親王がスキーを楽しむなど皇室とゆかりのある地区(宮の森という地名の由来)でもあります。札幌都心の眺望を四季折々の風景と交えながら楽しめる円山、宮の森地区は北海道の住みたい街ランキングで常に筆頭に上がります。2022年8月に竣工した高級マンション「プロスタイル札幌 宮の森」は建築界の巨匠、隈研吾氏による設計で大いに話題を呼びました。外壁に道南の間伐材を取り入れ、木のぬくもりを感じるラグジュアリーレジデンスは存在感がありながらも、原生林の風景に調和していて素敵です。本州では味わえない北海道の豊かさを体現しているかのようです。

【公式】プロスタイル札幌 宮の森|新築分譲マンション|デザイン (prostyle-residence.com)

 

仙台・・・泉パークタウン

これまたさらに「どこ?」となりそうな地名です。

仙台市北部の副都心、泉中央(東北の雄、仙台を分解する - えだ (hatenablog.com)参照)の北西に位置する高級住宅地です。先述の札幌宮の森・円山を都心立地型とするなら、仙台・桂は郊外立地型となります。高度経済成長期の1969年に造成された泉パークタウンの一角に位置し、同エリア内にアウトレットモール、高級ホテル、ゴルフ場を有する東北きってのハイソエリアになります。

 

厳格な紳士協定(域内のルール)が敷かれ、電柱が設置されていない桂ガーデンコートの景観。

その中でも庭園街区「桂ガーデンコート」は秀逸で、平屋二階建て住宅と整った街路樹で統一された景観に圧倒されます。「閑静な住宅街」というワードがぴったりです。

こちらは桂ガーデンコートと双璧をなす紫山エリア。メタセコイア並木が海外感ありますね。

泉パークタウンJR仙台駅から北に10㎞の距離があり、こちらも車以外のアクセスが難しいエリア(公共交通を使うと、地下鉄+バス+徒歩で50分ほど)。住居者以外の進入を遠ざける立地にあります。さらに紫山はパークタウン内で一番北はずれにあり、その先は深い森で覆われています。悪く言えば閉鎖的ですが、治安、ブランドイメージの維持を考えると納得です。

 

東京・・・元麻布

言わずもがな東京都心の超一等地です。

麻布台、南青山、白金台、番町と並ぶ高級住宅街の一つです。

JR東京駅から南西に約6㎞、最寄りは麻布十番駅広尾駅

驚きなのが大使館の多さ。韓国、フランス 、中国、ドイツと半径500m以内に集中しており、行き交う人も駐在風の外国人が多いです。大使館の立地を見てくと、見晴らしの良い高台が選ばれる傾向があり、麻布、三田、高輪、渋谷の坂上に多く構えられています(日本との関係が微妙な国ほど、建物前の警備が露骨に厳重なのが面白いです)。

そのこともあってかインターナショナルスクールや輸入物のスーパーが充実しているのが元麻布の特徴です。

韓国大使館

麻布十番商店街から急傾斜の坂を上り切った先に見えてくるのが「元麻布ヒルズ」。上層階に行くほど面積が大きくなる特徴的な構造となっています。

 

 

低層の高級マンションが続きます。築年数が結構いってそうなオールドマンションも多いです。こうして写真を見てみると、宮の森のほうが高級住宅街ぽい景観ですね。実際、元麻布はごく普通の戸建て住宅や賃貸マンションも混在しており、東京都心にありがちな景観となっています。しかしやはり天下の元麻布、1㎡あたりの地価は宮の森の14倍、約225万円。普通の戸建てに見えても超富裕層でないと住めないというわけです。

奥まった路地に行くと、このような美しい景観も。

東京・・・松濤(しょうとう)

東京のもう一つを決めるにも苦慮しました。南平台、田園調布、成城、尾山台と都心以外にも数え切れないほどあるのです。その中でも、風格漂う松濤をピックアップしました。

場所は、渋谷センター街を抜けた先、旧東急本店の裏手に位置します。若者で賑わう宇田川町と隣接しているとは思えないほど閑静な住宅街で、住居者以外の流入はまばらです。ほぼ同じエリアといえる富ヶ谷には故・安倍晋三元首相の公邸があり、公道の入口から厳重な警備が敷かれています。

元麻布よりも「豪邸」「邸宅」が多い印象です。港区の一等地よりかは家賃が下がるので、専有面積が大きく作れるのでしょう。それでも1㎡の地価は約170万円で、土地代だけで億をゆうに超えてしまいます。どの家も高い壁に覆われており、シャッター付きのガレージがマストで完備されています。すごい。

かつては、東急百貨店東急本店が松濤住民御用達の買い物スポットでしたが、2023年1月で閉店しました。渋谷の顔ともいえる百貨店が無くなるのは残念です。今の松濤の人々はどこで買い物するのでしょうか。

 

 

次回、西日本を中心に紹介していきます。お楽しみに!