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北陸の観光都市 金沢を分解する

 

 

 

みなさんこんにちは。

 

久しぶりの都市分解シリーズです。

今回は、みんな大好き金沢について解説していきたいと思います。

正直、私も金沢について書きたくて仕方がありませんでした。

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コンパクトな市街地に複数の都心と観光地が存在し、完成度の高い都市である金沢。

魅力について次章から深堀していきます。

 

1.人口

都市規模を即時に把握するのに人口は不可欠です。見ていきましょう。

456,537人*1。同じくらいの都市として高松市(約41万)、松山市(約50万)が挙げられます。政令指定都市ほどではないが、それなりに大きな都市というイメージです。後述しますが、金沢の都心である武蔵が辻~香林坊~片町のメインストリートを歩くとオフィス街や繁華街がはっきりと形成されているのが分かり、北陸の中心都市であることが実感できます。

就業人口の割合をみると、第三次産業(農業、工業、漁業に分類されないサービス業等)の人口比は76.5%で、全国平均の72.8%を上回っています。*2f:id:shidare225:20240413090709j:image

加賀野菜が有名なので農業も盛んなのでは?と思ってしまいますが、第一次産業の就業者数割合はわずかに1.4%にとどまっています(全国平均3.5%)。

平日の朝金沢駅前に立つと、市内中心部へ向かうバス乗り場に長蛇の列が伸びており、肌感で都市のエネルギーを感じます。

2.交通

北陸新幹線IRいしかわ鉄道(旧JR北陸本線)、北陸電鉄、北鉄バス等。

2024年3月をもって金沢市内からJR在来線が消滅しましたが、JR七尾線より毎日直通運転があります。f:id:shidare225:20240413090735j:image
中心部には鉄道は通っておらず、バスがメイン。土休日には100円で乗車できる観光地循環型のバスも出ます。

3.歴史

戦国時代に加賀一向一揆の拠点となった金沢。織田信長軍によって鎮圧され、今の金沢のいしずえを築いた前田利家が1583年に入城。城下町を整備し、「加賀百万石」の名の通りの繁栄ぶりを見せました。今日まで戦禍を逃れた兼六園、長町武家屋敷、金沢城尾山神社、ひがし茶屋街の景観が情緒を生み、国内外の観光客を魅了しています。f:id:shidare225:20240413090931j:image

同時に金箔、漆塗、能、加賀友禅といった独自の加賀文化が花咲き、国内有数の文化都市に押し上げました。

あまり知られていないのですが、1887年に旧制四高(今の金沢大学)が置かれ、早くから学術都市を目指した過去もあります。f:id:shidare225:20240413091012j:image

4.魅力

地理的な観点からみると、「完成度の高すぎる究極のコンパクトシティー」という評価ができます。正直なところ中心市街地は決して広いとは言えず、半径1㎞の円に全て収まってしまいます。この中にターミナルである金沢駅、市民の台所がある近江町市場武蔵が辻)、企業の支社や銀行が集中する香林坊(やや武蔵が辻寄り)、若者が集まり、夜も華やかな片町という用途ごとに4つの都心が存在します。という事で車が必要なく、中心エリアに住めば徒歩、自転車、バス(本数多め)で生活が完結するのが個人的に魅力に感じている点です。朝は兼六園で散歩、昼は長町の武家屋敷を活かしたカフェ、夜は片町のビストロで・・憧れますね。f:id:shidare225:20240413091609j:image

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5.問題点

一方、金沢大学が市街から離れた山の中にあるなど、学校や勤め先が中心地以外にあると話は変わってきます。基本的には鉄道が網羅していないので、車所持が必須となります。金沢は区画が狭いうえ観光地であるため、SUVなどの大型車は不向きです。行きかう車も不思議と軽自動車が多いように思います。

また、気候も太平洋側とは大きく異なり、冬場は北陸独特の寒さと降雪に悩まされます。年間を通して雨が多く、「弁当忘れても傘忘れるな」という謳い文句があることは有名です。天気が悪い日が続くと心理的に落ち込む人も出てくるのではないでしょうか。

週末や三連休は観光客が押し寄せ、生活動線上に滞留されるという若干の「オーバーツーリズム」化も問題です。京都ほど顕著ではありませんが、インバウンド観光客が増えている現在、もし住むのであれば場所をよく吟味する必要があります。

6.新潟との比較

北陸最大都市は金沢と新潟どっちか」という議論は終わりが見えません。

個人的な見解は、「人口、GDPは新潟の圧勝」「文化面、都市魅力度は金沢に軍配」という事で「引き分け」を宣言します。

 

新潟市の人口は764,193人*3

一方の金沢市456,537人新潟市の3分の2程度です。

信越本線上り新津~新潟間は、コロナ禍という短い期間ですがJR東日本の混雑率トップに躍り出たことがあります。

都市高速並みの機能をもつ新潟バイパスは国内の国道で2番目に交通量の多い道路で、深夜帯を除くほぼ全ての時間で渋滞が発生します。港湾を有することから、今でも石油化学工業、海上運輸業が存在感を発揮しており、多くのトラックが新潟バイパスを行き交います。

令和2年度の新潟市の市内生産額(名目)は3兆1422億円。*4

金沢市の資料がなく石川県の数値になりますが、県内総生産額(名目)が令和2年度で4兆5,277億円。*5

上越新幹線の開業が北陸新幹線金沢開業より33年も早いことを踏まえると、いかに新潟市が国家にとって重要な位置づけにあるかがわかるかと思います(これに関しては田中角栄の功績が大きいですが)。

人口集積、経済規模では新潟に軍配が上がります。f:id:shidare225:20240413091526j:image

 

一方、「金沢と新潟どちらか一都市旅行ができます」と言われたら、大多数の人が金沢を選択することでしょう

1泊2日もあれば加賀百万石の繁栄ぶりを知れる観光地を周れるだけでなく、グルメやカフェなんかも十分に満喫できます。街がコンパクトですからね。市内中心部で観光が完結するのでレンタカーを借りる必要もなく、初心者でも気兼ねなく楽しむことができます。f:id:shidare225:20240413091733j:image

新潟も同じ日本海側に位置するので春夏秋冬がはっきりしており、気温の年較差が生み出す農作物や豊富な海鮮が有名です。しかしここにおいては金沢と互角、むしろ和菓子を中心としたスイーツのクオリティが秀逸で、グルメ面でも一歩リードしています。

アート、建築の観点からも金沢の右に出るものはなく、金沢駅の「おもてなしドーム」「21世紀美術館」「金沢海みらい図書館」といった趣向を凝らした建築物が点在しており、みごたえがあります。

※個人的見解ですが、武蔵が辻~香林坊の「中心街」感は新潟のそれを上回っています。金沢駅前~片町まで都心が均等に連続しているので回遊性が高く、自然と人が集まってくるからではないかと推測しました。新潟の旧中心街である古町がもっと活気があれば…と思わずにはいられません。

 

7.まとめ

 

今回の都市分解シリーズでは、みんな大好き金沢を取り上げました。

 

複数の都心が均等に分布していて美しい、ある意味理想的な40万都市。

金沢駅~武蔵が辻~香林坊~片町を結ぶ石川鉄道の市内線があったらもっと求心力の強い都市になっていたかもしれません。そんな妄想を膨らませるのも楽しいものです。

 

和菓子、加賀友禅などの伝統工芸の分野でその名をとどろかせる金沢ですが、2024年3月に北陸新幹線福井県敦賀市まで延伸開業したため、今後は「通過点」となってしまいます。

しかしながら、加賀百万石の栄華を色濃く残す金沢の魅力にハマると簡単には抜け出せません。自身、今年の3月(一か月前)に5回目の金沢旅行をしてきたのですが、また禁断症状のように行きたくなるのです。もしこれから行かれる方がいれば、この記事を通して解像度を上げて楽しんできてください。

 

それでは!