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福岡最後の一等地の今後

みなさんこんにちは。

 

前回に引き続き福岡ネタです。

JR博多駅近く、九州大学箱崎キャンパス跡地の再開発について、徹底解説します。



1.福岡市の国内での立ち位置

市主導でMICE(会合、研修、展示会、イベント)の積極的誘致やクルーズ船寄港誘致を進め、従来の支店経済都市・九州の中心都市から、東アジアの拠点都市というポジションに。第3次産業の人口比が高く、ITを中心としたスタートアップ企業の新たな集積地として頭角を表しています。

国家戦略特区に指定された繁華街・天神では従来の高さ制限を取っ払った新たな高層ビルが次々と建てられ、ひっ迫するオフィス需要やホテル需要に対応しています。

敏腕の高島市長(アナウンサー出身)の元、産官はもとより一般市民を巻き込んだ街づくりが繰り広げられ、まさに生き馬の目を抜く勢いで進んでいます。

2.九州大学箱崎キャンパス

箱崎エリアは江戸時代より漁村として栄えました。1911年に今の九州大学にあたる九州帝国大学が置かれると漁村という立ち位置は薄れ、学生街や古書街へと様変わり。学生数年が増加し手狭になった箱崎キャンパスは2014年に現在の福岡市西区・伊都(いと)キャンパスへと移転。博多・天神エリアからのアクセスは低下しましたが、郊外の広々したキャンパスに生まれ変わり、研究が盛んな大学としてはスペースをふんだんに使え良いのかのしれません。

一方、大学としての機能を伊都キャンパスに譲った旧箱崎キャンパスは、近代的な建築物を一部残し、取り壊して更地に。博多駅から2駅という立地に東京ドーム6個分という広大な空白地帯が出現しました。50ヘクタールという土地に全く新しい新都市が生まれようとしています。

3.どのような街ができるのか

2024年4月、土地を所有する九州大学とURは公募をかけ、住友商事をはじめとする参画する企業の選定を実施。九州電力率いるチームが大敗したニュースが記憶に新しいです。九大が100年近く所有したというブランドイメージ、筥崎宮のような歴史を感じさせる空気感を街に取り入れ、イノベーション拠点として機能させ、幅広い人々を引き寄せる高次元都市を創るというのが計画のグランドイメージとなっています。

Microsoft PowerPoint - 180727_グランドデザイン策定版.pptx (fukuoka.lg.jp)

実際の計画は50ヘクタールの敷地を北エリア、南エリアに分割。
北エリアは福岡市主導で、交通渋滞の激しい貝塚駅周辺を再整備し新たな交通の帰結点を創出します。

一方の南エリアはURに完全委任。道路敷設もURに託し車、自転車、人が共存しする区画づくりを行います。

Microsoft PowerPoint - 180727_グランドデザイン策定版.pptx (fukuoka.lg.jp)

ここまではよくある再開発のスキームです。しかし、箱崎地区は一味違います。

福岡市が掲げる「FUKUOKA SMART EAST」という最先端のスマートシティ構想をこの箱崎地区再開発事業に落とし込み、国内最大級のスマートシティを実現しようとしているのです。

smartcity.fukuoka.jp

実際に乗客を乗せて運行するバス自動運転の実証実験、視覚障がい者の事故防止実験(白杖に搭載されたAIカメラが赤信号を感知し振動を与える)を既に行っています。

FUKUOKA Smart EAST (smartcity.fukuoka.jp)

主に移動(モビリティ)、健康管理の分野を中心にIOT(モノの情報化)を加速させ、バスドライバー不足や残業問題、交通事故の抑止、子供や高齢者の見守りを実現させていきます。

福岡市がここまで積極的に取り込むのは、視座が日本国内だけでなく海外、とりわけ東アジア全域に向いているから、人口減少社会を主体的にとらえているからです。

アナウンサー出身の高島市長の自叙伝を読んだことがあるのですが、「世界中で自身と同年代の大統領が活躍している。日本という一国内で成功してあぐらをかいてはいけない」と危機感を募らせる描写がありました。確かに日本国内では唯一のスタートアップシティとなり人口は上昇傾向ですが、アジア全域に目をやれば、深刻な渋滞問題を解消すべく力を入れているスマートシティはごまんとあるわけです。この中でもリーダーとして存在感をあらわにできるか、今後の福岡市に目が離せません。

福岡市は全国でも珍しい人口増加自治体の一つですが、いずれは減少に傾きますし、福岡県、九州、日本という広い枠組みでみると顕著な人口減少社会の真っただ中にいます。これは決して他人ごとではありません。福岡市でできたことを他都市へ移植するぐらいの気概で取り組んでいるのが分かります。

4.まとめ

今回は、博多駅福岡空港に至便な福岡市東区箱崎地区の再開発の様子をみてきました。東京でも大阪でもなく九州の地から世界に通用するスマートシティが生まれようとしていることに興奮を隠しきれません。江戸時代の漁村としての役割、20世紀の学生街、そして令和の現在全く新しい街が建設され、箱崎地区の進化の様子を目の当たりにしているのです。筥崎宮や九大の遺構が残る歴史的なエリアで最先端のテクノロジーの豊かさを享受しながら暮らし、イノベーティブなアイディアが生まれ、それがまた箱崎での暮らしに再循環される。素敵なことだと思いませんか。

同時進行中の「天神ビッグバン」「博多コネクテッド」という再開発プロジェクトと掛け合わせると可能性が無限大に広がる福岡の今後。日本という国家を飛び出した国際都市になっていくのが非常に楽しみです。